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道後温泉

初めて道後温泉本館へ行った。四年間松山で過ごしたのに一度も本館のお風呂に入ったことがなかった。下宿は、道後のすぐ近くだったが下宿のおじいさんが毎日風呂を焚いていたので行かなかった。

家内とぶらっと行った。本館の二階に上がった休憩所で浴衣に着替え一階にある浴場に入った。夏目漱石の小説「坊ちゃん」ではこの湯船で泳いでいたのだなと思いながら入った。ちょっと熱かったがいい湯だった。
二階の休憩所でお茶とせんべいが出て来て、うちわでパタパタとあおぎながらお茶を飲んだ。汗がじわっとにじみでてきたがすだれの間から風がさーっと吹いてきて気持ちが良かった。冬なら体の芯まで温まるだろうなと思った。建物はかなり古いが三千年の温泉の歴史があるだけに風情があった。

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 道後温泉本館の前が商店街となっており、行ってみた。学生時代の頃とは随分変わって洗練された商店街になっていた。商店街の中程に椿湯があったので驚いた。無くなったと聞いていた。建て替えてきれいになっていた。
 この椿湯には入ったことがある。ここのお湯は肌をこするとヌルヌルしていた。このヌルヌルが湯冷めしないそうだとか。椿湯と本館の湯質は同じだと聞いていた。だが本館のお湯はあまりヌルヌルしていなくて学生時代に入ったのと比べて湯質が変わってきているのかなと感じた。

 商店街に古風で雰囲気がとても良い喫茶店があり惹き込まれるように入って行った。禁煙席は奥ですと言うのでカウンターのある喫煙席をガラス越しに見ながら狭い通路を奥へずーっとずーっと入っていくと古風な座敷と庭がありそこでコーヒーを飲んだ。なにげなく床の間の掛け軸をみてみると何を書いているのかわからず最後の行に「極堂」という文字が目に飛び込んできてあっと思った。柳原極堂翁だ。ウエイターさんに何と書いていますかと尋ねると自分にはわからないので聞いてきますと言って聞きにいってくれ、「月正に芭蕉の影のしかとあり 八十二老人極堂」で意味はわからないとのことだった。月がまさに大きな芭蕉の葉の影からくっきり見える?という意味でしょうか。

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 「淡々と水のごとし 極堂」 こんな境地にいつかなれるでしょうか。
 
 コーヒーを飲んで帰ろうとしていたら、喫茶店の奥さんがこちらに来たので何でこんなに極堂翁の掛け軸などがたくさん飾ってあるのか尋ねてみた。するとここのお父さんと親交があり極堂翁から毎年年賀状が来ていたとのこと。初めて直筆を見る機会を得た。
 極堂翁と正岡子規は同じ歳でいっしょに東京へ遊学した仲で、極堂翁が「ホトトギス」を創刊し、正岡子規が東京で「ホトトギス」を引き継いだ。正岡子規と夏目漱石は二番町(当時)の下宿「愚陀佛庵(ぐだぶつあん)」で短期間だったがいっしょに生活した仲だった。

 大学二年の時この喫茶店のすぐ上の坂を上ったところにあるホテルで着物の展示会があり、昼食のお弁当にだすちらし寿司を盛り付けるアルバイトをした。銀天街という名の商店街の中に「瓢百庵」というお寿司屋さんがあった。ご主人の名前は、三井清さん。普通だったら数日のアルバイトだったのでそのままお付き合いは終わっているのにそれがずーっと続いて行った。卒業後も。

 三井さんには、学生時代よく「お代はいらないから友達をいっぱい連れておいで」と何度も言われていた。でも行かなかった。ある時、何度も言われていると友達にこのことを話すと「この世にそんな人がいることはありえない」と言い切るのでじゃあ一度いってみるかと大勢つれて行ったことがある。言ったとうりお代は受け取らなかった。

 三井さんは、川柳を得意としていて、熱烈な極堂ファンだった。卒業後、手紙によく極堂翁の「こころざし富貴にあらず老いの春」の句を書いてきていた。老人は富んだものでも貴いものでもありません。ちょっとした心づかいが嬉しいものなのですと。また、正岡子規と夏目漱石がいっしょに下宿していた「愚陀佛庵(ぐだぶつあん)」の再建に副会長として奔走していると手紙に書いてきてあった。「愚陀佛庵(ぐだぶつあん)」は、昭和20年松山空襲で消失し昭和57年に松山城の下にある愛媛県立美術館の敷地内にある万翠荘内に再建されたそうだ。三井さんが尽力した「愚陀佛庵」へ一度行ってみようと思っています。


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 ぶらっと行った道後温泉だったが、道後商店街に極堂翁と親交のあった喫茶店に偶然出くわすとは思いもよらず、道後温泉と極堂翁にどっぷりつかって松山を後にした。


                        春風や

                          ふねが伊予に寄りて

                                   道後の湯

                                      柳原 極堂

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投稿: 「旬の話題ブログ」スタッフ | 2007.09.11 午前 10時04分

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